入口 > ? - ??? > 保健室3

保健室3

「質問形式にしよう。これはあくまでも例え話だが……思い当たる事があれば、素直に「はい」と肯定して欲しい」

「その1。自分に悪いところがあるのに、それを他人に擦り付けて揉み消した」
「……」
「その2。他人に助けを求められても、感謝をされても、何も出来ず、ただただ見殺しにした」
「……」
「その3。ふむ、これは現在も患っている事か」



「その身に、叶わぬ欲望の渦を抱えたまま生き長らえている…」



「な…ぜ……」

ニヤリ、と顔が笑う。
射抜かれ、体が、思考が、全てが固まってしまい、動けない。

ぐい、と顎を強く掴まれた僕は、抵抗も出来なかった。
近付けられた顔を見てしまい。思わず呼吸を止める。

「分かるのだよ。目を見れば、ね」

いつだったかの、幼い記憶が、よみがえってしまった。
恐ろしいほど、鮮明に、その光景が目の前に写っている。
首を、絞めつけられる感覚に、襲われる。

「人間、どんな顔をしているか、自分では分からないものだ。未練たらたら且つのうのうと息をし続けている憐れな君のためにも、言って差し上げようか?」

あまりの息苦しさに、震えた唇が。

「は………」

肯定の息を漏らしかけた。



「……結構、で…す」

無理矢理飲み込んだ僕をいちべつして、ひらりと手を離した。

「そのようだ。物分かりはいい、さすが生徒会長だ」

(自覚症状有リ。原因不明。)
(必要ニ応ジ、カウンセリングヲ行イ、対処スル。定期的二呼ビ出スノデ、生徒ハ従ウヨウニ。担当教員ニハ、生徒ガ優秀ナ成績ノ為考慮スルヨウ此方カラ伝エテオク。)

そう書かれた1枚の紙を手渡した。

「診察終了。私は用があるので退室させてもらう」

「……………っ」

うずくまる僕をよそに、職員は診察器具を片付け、保健室を出ていってしまう。







頭を抱え、必死に思考を止めようとした。
けれど、けれど、溢れてくる想いは、

罪の意識と、深い後悔。



時計を見ている余裕などなかった。
休み時間はとうの昔に終わり、午後の授業が始まる時刻を過ぎていた。
こんな事をしていてはだめだ。
……戻ろう。

おぼつかない足で、教室を目指し、廊下をさ迷う。
あんな惨劇の後だが、何とか歩けてはいる。

しかし、脳内に渦巻く想いは、消えない。
ハル君に、会って、顔を見たい。

そう無意識に彼を求めたが、今この場所には、彼は、いない。
もうしばらくの間辛抱して、苦しい授業を受け続けるしかないことは――分かっていた。
これは、罰なのだ。


 →

2019-05-18